「小羊の会」2023年1月12日
法亢聖親牧師からのメッセージ
説教題 「今の時を生かして用いなさい」 エフェソ5章15節~17節
「そこで、あなたがたの歩きかたによく注意して、賢くない者のようにではなく、賢い者のように歩き、今の時を生かして用いなさい。今は悪い時代なのである。」(エペソ5:15,16口語訳)
「愚かな者としてではなく、賢い者として、細かく気を配って歩みなさい。時をよく用いなさい。今は悪い時代なのです。」(エフェソ5:15,16)
本日の聖句は2つの句からなっています。「賢く歩きなさい」と「今の時を生かして用いなさい」と言う2つです。この2つの句は、それぞれ別のことを言っているのではなく、「賢く歩く」ことが、すなわち「今の時を生かして用いる」ことに結びつくということなのです。
笠信太郎氏が「ものの見方について」という著書の中でとても面白いことを言っています。「イギリス人は歩きながら考える。フランス人は、考えた後で走り出す。スペイン人は走ってしまった後考える」と言っています。これはそれぞれの国民性や思考様式や行動形態を特徴的にとらえたものです。歩くという行為は、人間の基本的動作ですが、この基本的動作の中にその人の、またその国民の特色が示されるのです。つまり歩くという動作の中にその人の姿・態度が表れる、即ち生き方が見えるということができましょう。そればかりか歩くという行為には、目的があり、目的を達成するためにそれを成し遂げる意志と努力が必要です。ですから「賢く歩きなさい」という聖書の言葉には深い意味が込められているのです。「賢く歩く」とは、単に世俗的に賢く要領よく生きなさいということではありません。聖書はこの世の徳を説こうとしているのではないからです。
本日の聖句では、私たちが人としてどのように歩んだらよいかを伝えています。聖書の言う人として賢く歩く生き方とは、生き方が真に他者にとって喜びとなるか、益となるかを考える生き方のことです。パウロが言う賢いという意味はこのことです。
「今の時を生かして用いなさい」についてですが、ギリシア語には、クロノスとカイロスという2つの「時」を表わす言葉があります。クロノスは、時計で計ることのできる時間であり、すべての人が共通して持つことができる時間です。これに対してカイロスは生涯にただ一度だけ訪れるチャンス決定的な時という意味をもっています。これは選択と決断の時であります。ですからこのカイロスに出会った時に、どのように選択し決断するか、どのように挑戦するかによって人生の成功・不成功が決まります。
つまり私たちの人生の中で、カイロスは選択、決断、挑戦の時だと思います。旧約聖書の伝道の書(新共同訳聖書ではコヘレトの言葉)には、「天(あま)が下のすべての事には季節があり、すべてのわざに時がある。生きるに時があり、死ぬるに時があり」(3章1節以下)とあります。伝道の書は、私たちに生のそれぞれの段階においてカイロスを悟ることの大切さを伝えています。「今の時」とは、2度とおとずれることのない2023年の時のことであり、その時を生かすために一日一日を大切に過ごす(用いる)ようにと言うことであると思います。