「最初のクリスマス」 ルカ2:8~12

「聖書の学びの会」     2023年12月6日(水)

★法亢聖親牧師からのメッセージ

最初のクリスマス
「さて、この地方で羊飼いたちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。すると、主のみ使いが現われ、主の栄光が彼らをめぐり照らしたので、彼らは非常に恐れた。み使いは言った。『恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。きょうダビデの町に、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼い葉桶(おけ)の中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである。』」(ルカ2:8~12)
 最初に主のご降誕の知らせを受けたのは紛れもなく羊飼いたちです。当時のユダヤ社会の底辺(最下層)の人たちに告げられたのです。すなわち、最初のクリスマスは、深い悲しみや孤独、不安や貧しさを抱える人々のただ中で起こった出来事だったのです。今朝は、クリスチャンの詩人が書いた詩を通して最初のクリスマスに思いを馳せたいと思います。

「聖 夜」  森田 進
ひたひたと波がうたっています。
夜光虫がまちきれなくて 背伸びしています
あちこちで 星がきらめきはじめました
こんなに静かな夜
時が満ちて すてられた人々の涙から
あたらしいメシアが生まれるのです
人々は 再び よみがえるのです
島全体に星が降っています
すてられた人々の涙から
あたらしいメシアがうまれるのです
 
森田さんは、恵泉学園の教師であり詩人です。この「聖夜」という詩は、苦しみと悲しみのただ中でクリスマスにうたった詩です。森田さんご夫妻は、その年の11月双子の赤ちゃんを授かったのですが、一人は12時間後、もう一人は30時間後、未熟児事故でしょうか相次いで天に送られたのでした。この耐えがたい悲しみの中、そして1か月後に迎えたクリスマスは、重苦しいクリスマスでした。ご夫妻は、自分の子供たちの死と神の子の誕生との間に心が引き裂かれるような思いでイブを迎えざるを得なかったのです。人々の喜びの輪に入ることができず、置き去りにされ心が引き裂かれていた彼らの心根が伝わってくる詩です。しかし彼らは、思うのです。救い主イエス・キリストは、そんな棄てられ、置き去りにされた人々の涙から生まれたのだと、そう思い、そう信じたのです。
ひたひたと歌っていた波とは、涙です。待ちきれなくて背伸びしていた夜光虫とは、そんな涙の結晶です。最初のクリスマスとはまさに、悲しみの涙にくれ、貧しさと虐げにあえぐ人々のただ中で起こったのでした。悲しみ、苦しみ、悩み、孤独、せつなさ、そういう闇のただ中に小さな暖かい光がともるようにして、主イエスはお生まれになったのではないだろうか。はち切れそうなお腹を抱えながら、権力者の横暴によって辛い旅を強要されたマリアとヨセフ。宿屋にも断られ、馬小屋に泊まらざるを得ないマリアとヨセフ。暖かい産湯もなく、家畜たちの餌箱である飼い葉桶の中に産み落とされた幼子。そしてそこに、集まったのは、差別され、町から追い出され野原で野宿するしかない羊飼いたちであり、東方の国の博士たちで、この人たちも差別されていた異邦人の占星術者たちであったのです。そして新しいメシア(油注がれた者)の誕生を恐れたヘロデ王によって2歳以下の多くの子どもたちが殺されました。たくさんの悲痛な叫びがこだましました。そのような悲惨な現実のただ中に主イエスは、お生まれになられたのです。まさに「棄てられた人々の涙から」主イエスは生まれたのです。涙を担い苦しみ、嘆きを担う救い主が生まれたのです。ここに森田さんご夫妻は慰めと救いを見い出したのではないでしょうか。イザヤ書53章「苦難のしもべ」。

参考1 「小菊」   星野富弘
喜びが集まったよりも 悲しみが集まった方が
しあわせに近いような気がする
強い者が集まったよりも 弱い者が集まった方が
真実に近いような気がする
しあわせが集まったよりも ふしあわせが集まった方が
愛に近いような気がする
参考2 「貫く ひかり」 八木重吉
はじめに ひかりがありました
ひかりは かなしかったのです
ひかりは ありとあらゆるものを
貫いて 流れました
あらゆるものに 息を 与えました
人間の心も ひかりの中に生まれました
いつまでも いつまでも 悲しかれと祝福されながら

八木重吉曰く、「かなしかれ」これが私たちへの祝福の言葉なのだと言うのです。実に、
自分の悲しみを、また人の悲しみを本当に悲しむことのできる人は、祝福された人なのです。私たちは、それぞれに、心に悲しみを抱え、悩み、苦しみを抱えて生きています。そして私たちの周りには、私たち以上に耐えがたい悲しみや切なさ、孤独を、また、飢えや恐怖を抱えて生きている人たちがいるのです。

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