「正しさの限界」 伝道の書7:13~18

「聖書の学びの会」2023年2月1日

 法亢聖親牧師からのメッセージ

            奨励題 「正しさの限界」         伝道の書7章13節~18節

 「神のすることに目を留め、それに従いなさい。神が決めたことを変えることなどできません(13)。順境の時には、できるだけ楽しみなさい。逆境が訪れたら、神は与えると同時に取り上げる方だと知りなさい。こうしてすべての人が、この世ではあらゆるものがむなしいと悟るのです(14)。
 私は、このむなしい人生のすべてを見てきました。正しい人が若死にし、悪人がたいそう長生きすることもあるのです。だから、正しすぎたり、知恵がありすぎたりして、自滅してはいけません。かといって悪人になりすぎるのも、愚か者になるのも考えものです。自分の時が来る前に死んではいけません(15~17)。まかせられた仕事は、どんなことがあっても手放してはいけません。神を敬っているなら、必ず神からの祝福を期待できるのです(18)。」<リビングバイブル 7:13~18>
 私たちは、理想を語ることが好きです。理想に向かって進む人の姿に心打たれます。それと共に、世界が理想通りには動かないことにも気が付いています。
 伝道者は、むなしい人生、つまり短く、あわただしいのに、期待しているような結果を生み出すことのない人生を振り返ったうえで、自分はあらゆることを見た、と語っています。そして、世界が理想通りに動いていないこと、すなわち正しい人が正しいのに滅び、悪しきものが行っているのに長生きすることに気づいた、と独白しています(15節)。世界で正義はなされていません。
 だからこそ、伝道者は、正しすぎることなく、自分の知恵に依存しすぎることなく生きるように勧めています。正しい歩みを否定しているのでも、知恵の習得など無駄だ、と主張しているのでもありません。世界は因果応報の原則で動いている、という幻想を捨てるように勧めているのです。正しさや知恵が常に祝福と繁栄をもたらすわけではありません。知恵と正義には限界があります。だからと言って、愚かであったり、悪を行い続けることがよいのではありません。悪と愚かさは、必然的に破滅へと人を導くからです。ふさわしい「時」以前に、死ぬのです(16,17節)。
 そのような世界に生きているのですから、伝道者は「一つをつかみ、もう一つを手放さないのがよい」と読者に勧めています(18節)。適当に正しく生きなさい、適当に悪に生きなさい、と言っているのではありません。物事の選択において、正義と知恵の限界を踏まえ、愚かさと悪の危険性を考慮しなさい、と命じているのです。理想に固執するあまり、現実の理不尽さに目を閉ざすことがあってはならない、と語っているのです。
なぜ、世界は理不尽なのでしょうか?それは、天地を創造し、主権者として世界を支配している神さまがそのようにしているからです。「曲がった世界はダメだ」と人が神さまに訴えたところで、人は神さまの前では全く無力です。神さまが曲げたものをまっすぐにはできません(13節)。
 歪んでしまっている世界では、何事もうまくいく順境の日と、何をやってもうまくいかない逆境の日が、交互に、規則正しくやっては来ません。将来を予想して、うまくいく日に行動し、うまくいかない日には何もしない、というわけにはいきません。
 主権者である神さまが、将来を予想してうまくやっていこうとする人の野望を阻むのです。「後のことを人にわからせないため」です(14節)。神さまは、人にとって理不尽な方ですが、全能者です。
 伝道者は、「現実を生きよ」と教えています。正しく生きることを否定しているわけではありません。むしろ、最悪な状況の中に生きている人に対して、因果応報の原則で自分を苦しめるべきではなく、むしろ予想外のことをもたらす神さまが世界を支配しているという希望を与えようとしているのかもしれません。

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